共和レザー株式会社

近年、アパレルや雑貨の分野では「ヴィーガンレザー」や「アニマルフリー」などの言葉と共に動物愛護やサステナブルの観点から本革から合成皮革化への動きに拍車が掛かっている。
この流れは自動車業界へも波及し自動車内装用素材も本革から合成皮革化へのシフトがトレンド化。

そのトレンドの中で共和レザーは車両用の本革を超える耐久性と風合いの両立をした合成皮革を開発し、多くの車種へ採用され市場からも本革と遜色無い風合いを持っていると評価を頂いている。

そんな中で共和レザーは合成皮革の更なる高品質化へ着目。
例えば、高級なソファに使用されるようなしっとりとした本革の質感が車両用のシートで使用する合皮で再現出来ないか、検討を開始した。

課題となるのは、自動車の室内空間という長期間厳しい環境下でも品質をしっかり担保する事。

高い耐久性を確保しつつ高級ソファのような質感を再現出来るか。
この高いハードルに挑んだ若手社員の開発ストーリーを紹介する。

開発者の紹介

津田 龍一デザイン部

趣味:
パン&スイーツ作り、ゴルフ
性格:
温厚 Apple好きの愛妻家。休日は美味しいお店の探索。
ゴルフはやるけど上手くない(本人談)

井口 由紀子内装技術部

趣味:
そろそろテニスを復活したいと考えている今日この頃
性格:
面倒見が良く後輩から絶大な支持を持つ。3児(2女1男)の育児をしつつ仕事も常に全力投球

太田 浩斗開発部

趣味:
植物を愛でる(特に苔が好き)
学生時代はサッカーに明け暮れる
性格:
探求心旺盛 仕事に熱いZ世代の草食系男子

開発スタート

上記3名が集まり開発スタート。
ソファ用、車両用本革、合成皮革を比較しつつブレストを実施。
ソファ用本革が持つしなやかでソフトな触感・見た目がポイントと捉えた。
基本設計は自動車シート用合皮に多く採用されている
当社「ルーミッシュ」をベースに改良を実施していく事とした。

Point 01
ソフトな肌さわりの実現ー シボ形状の改良 ー

まずは触感が良いソファ用本革の断面形状を測定し、合皮との違いを検証しました。

ソファ用本革は表面がスムースで指の引っ掛かり(抵抗)が少ない事に着目。
そこから指の接地面積をアップさせ抵抗感を減らす事で触感が改良出来るのでは、と仮説を立ててシボ形状の検討を進めました。

当社にある独自の技術であるデジタルでシボパターンを作製しレーザーで型を彫刻する「シボデザイン開発システム」を用い、様々なパターンを検討していきました。

難しいのは、単に浅いシボ形状にすると革らしさや見応え感が弱くなってしまい見た目の質感が劣ってしまいます。
見た目のシボ感を感じさせつつ、触感の良さを与えるシボ形状とは、という事を追求しました。
同時にフラット過ぎてもペタッとした触感になってしまう、最終的に塗布するトップコートとの相性も考え、フラット面+革シボの毛穴のみを抽出したパターンの組合せとしました。

Point 02
ナチュラルな見た目ー プリント表現による質感UP ー

ソファ用の本革が持つ見た目の検証から始めました。

ソファ用本革

車両用合皮

天然の革が持つ不均一さ、素材の深み感などが違いとして感じられます。
これをどう表現するか、わざとらしさが出ないように不均一さを表現するのがポイントとなりそうです。
自然な風合いの演出を緻密なグラビアプリントで表現するようにしました。
当社には柄の繊細さや意匠表現の幅広さが求められる住宅・住設分野で培ったグラビア印刷技術があります。
この技術を車両用合皮へ応用する事としました。

住宅分野向け木目意匠

住宅分野向け石目意匠

不均一さと奥行き感を意識しナチュラルな風合いを狙うため、解像度やドットの表現まで追求。
ソファ用本革が持つナチュラルさ(不均一さ)を表現するために、高解像度グラビアプリントを採用。
不自然な印象を感じさせないプリント柄の開発に成功しました。

Point 03
耐久性を維持しソフトな風合いへー トップコートの改良 ー

耐久性を確保しつつソフトな触感を実現可能な材料検討を開始。
本革の持つしなやかさに注目し、断面形状を測定してみました。

ソファ用本革の持つしなやかさに注目し断面のシボの凹凸より更に細かいミクロン単位の値を測定しました。
ソファ用本革はミクロン単位で見ると合皮の断面よりも更にきめ細かさがある事が分かります。
ソファ用本革は表面が微細な繊維質と天然の革が持つ油質によりソフト感や滑らかさを感じる、と仮説を立てました。
シボ形状はデザイン部の津田さんが改良を加えていますので、シボ形状特性にマッチしたトップコートの改良を施し、シボ+トップコートでソフトな風合いを表現するようにしました。

ソフトな風合いと高い耐久性を併せ持つ
合成皮革が完成!
量産の本革シート、合皮シートと共に
開発品のシートを作製

完成したルーミッシュソフトの外観

シートに仕立てたルーミッシュソフト

顧客向けプレゼンテーションで
パネラー評価を実施

若手技術者のチャレンジによって車両用合皮の耐久性を保持しつつ更なる質感UPする事に成功。
共和レザーでは合皮に新たな価値を付与する開発を常に進めています。

共和レザーのテクノロジー